短時間型通所リハビリテーション事業開設のポイント

megane

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在宅生活の支援として通所リハビリテーション事業があります。

しかし、新規で開設するにあたって、悩むことも多いと思います。

参考になる本はなにか?

介護保険の制度が分からない

どんな書類を準備しないといけないの?

加算?単位?20分リハビリするの?

デイケア管理職PT
デイケア管理職PT

10年以上前、通所リハビリの開設から

1-2時間の短時間タイプや

長時間タイプの現場・運営をしてきた経験より

1-2時間枠の短時間型通所リハビリの

開設時のポイントや考え方を解説いたします。

注意点

記事の内容に関しては、書籍の情報を確認しながら正確な発信を心がけ、努めています。しかし、情報の不備や自治体による解釈の違いがある為、掲載情報の活用に関しては、皆様自身精査の上、ご活用ください。また、私自身の考えを含んだ内容になっていますので、ご了承ください。情報の不備など確認された場合やご質問等ありましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけると幸いです。

準備したい書籍・事務所類の手引き

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介護保険事業の開設や運営に参考にしている書籍はこちらです。枕にできるぐらいの厚さです。

(株) 社会保険研究所の赤本・青本・緑本 です。

介護保険サービスでの介護報酬・人員配置基準・Q&A(質問と回答)が記載されています。

確認しておきたい文書はこちらです

これらの書籍・文書から

必要な人員、設備。書類の作成要綱などをチェックしていきます。

基本的に、書籍の内容の通りに対応すれば問題ありませんが

地方自治体によって解釈が異なる場合もあるようです。

通所リハビリテーションとは?

「通所リハビリテーションは、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、利用者が通所リハビリテーションの施設(老人保健施設、病院、診療所など)に通い、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供します。」

厚生労働省/介護事業所・生活関連情報検索より引用

これは通所リハビリ紹介文です。ここからまとめると。

対象者:自宅で生活している要介護者

提供サービス:生活支援、機能向上サービス

できる場所:老人保健施設、病院、診療所など

いつ:日帰り

デイサービスと通所リハビリの違い

デイサービスはこのように紹介されています

通所介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。

利用者が通所介護の施設(利用定員19人以上のデイサービスセンターなど)に通い、施設では、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供します。生活機能向上グループ活動などの高齢者同士の交流もあり、施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。

厚生労働省/介護事業所・生活関連情報検索より引用

通所リハビリと同じような紹介ですよね。

介護保険の通所サービスは

通所介護(デイサービス)と通所リハビリ(デイケア)があります。

サービス内容が似ている、何が違うのかわからない

このような意見もあるので、その違いについて解説します。

デイサービスと通所リハビリの違い

  • 医師の配置の有無
  • 最低時間枠の違い
  • リハビリ専門職の配置基準

医師の配置の有無

通所リハビリは

介護老人保健施設、介護医療院、病院、診療所などに設置を許可されており

医師の配置が必要です。

デイサービスは設置の基準が広い為

一般企業やPT・OT、または整体院などが開設したデイサービスも増加しています。

最低時間枠の違い

通所リハビリは1-2時間が最低時間なのに対し

デイサービスでは3-4時間になります。

デイサービスは生活支援の側面が強い為ではないかと思います。

リハビリ専門職の配置基準

通所リハビリにはリハビリ専門職の配置が必要になります。

【利用者100名に対して1名】

デイサービスにはリハビリ専門職の配置基準はありません。

Check

近年、【リハビリ特化型】と銘打ったデイサービスを見ることが増えました。これは、特に制度上【リハビリ特化型】があるわけではなく、看板に広告として銘打っているだけです。私の知人も開設していますが、リハ専門職が常勤し、運動プログラムや個別対応等のサービス提供を実施している印象を受けます。

通所リハビリの課題

デイサービスと似て非なるものではあるけれど

利用される方々が、違いを認知しづらいことがあります。

時間帯だけ切り取れば、レクリエーションの様子などは同じように映ると思います。

また、共通した機能も多いのも事実です

デイケア管理職PT
デイケア管理職PT

近年は、デイサービスと通所リハビリの違いを

認識される方も増えましたが

分からないのも無理ないですよね。

サービス提供側は

利用される方々が、その違いを認識して選択していただけるように努める必要があると考えています。

特に1-2時間型の通所リハビリは

通所リハビリの中でもリハビリ中心のサービス時間帯なので差別化しやすい時間帯です。

短時間型通所リハビリ開設のポイント

提供内容を明確にする

 ここではどんなサービスを提供するのか?

サービス提供を調整する介護支援専門員や

利用者本人が理解しやすいように具体的にする必要があります。

紹介文の一例

運動機器を使った自主訓練を行います。

設定・運動量は専門職が評価して、相談しながら調整します。

20分間、専門職との1対1のリハビリがあります。

このように自事業所の提供するサービスを具体的に説明できるようにしましょう。

継続的に提供できるシステムを作る

継続的に提供できる枠組みを作りましょう。

利用者数が少ない時期に、長時間個別対応していて

利用者数増加後に同様の対応ができなくなった時に、不満になることがあります。

通所リハビリでは、基本的に【個別リハビリ20分】という考え方はないです。

時間枠にとらわれずにサービスを構築する必要があります。

※【短期集中個別リハビリテーション実施加算】を算定する場合は40分必要です

個別対応○○分と説明すると、利用者理解は得られますが

リハ職人数に依存する利用者数の上限ができてしまいます。

例)時間枠2時間で、個別リハビリ20分とした場合

リハ職1人が対応できる利用者数は5人(入れ替わり時間を考慮した場合)

その為、【個別リハ20分あります】ではなく

【個別の対応はありますが、状態・状況に応じて調整します】の方が良いと思います。

利用者希望によっては

「肩がこる、腰が痛い、揉んでくれ」といったような要望中心になるかもしれません。

デイケア管理職PT
デイケア管理職PT

PTのマッサージ的な支援を全肯定する訳ではないですが

引きこもり予防、社会的フレイルの緩和の為の利用者の利用きっかけの一つや、本人からの情報収集等に活用できると思います。

対象者によっての、対応の引き出しの一つとしては

良いのではないでしょうか?

顧客層を考える

 通リハ開設を考えたとき、顧客層を考慮する必要があります。

短時間型の特徴として

介護者のレスパイト機能は少ない

機能訓練・運動中心】のサービス形態になるでしょう。

その為、顧客層は軽度者で要支援1・2~要介護1・2程度の方を中心に想定します。

実際には、要支援1・2の方々の利用を中心とした事業を組み立てると良いと思います。また、事業の理念・規模にもよりますが

クリニックレベルの規模では

車椅子でないと車両に乗れない(リフト対応)の方の受け入れ

送迎場面の制限にもなる為、留意する必要があります。

要支援・要介護の違い

要支援は利用料が1ヶ月毎定額に対して、要介護者は利用回数によって変動します。

通常規模型1-2時間枠を利用した場合の基本利用料

要支援2の方は、月に3回利用しても8回利用しても同じ。3999単位

要介護1の方は

月に3回利用すると、1098単位

8回利用すると、2928単位

要支援の介護報酬形態は、ひと月の定額になっている為

1回でも利用があれば利用回数による変動がありません。

つまり、継続的な事業運営の為の、収益の安定的な土台となると考えることができます。

また、要支援者はADL自立レベルの方も少なくありません。

自宅での作業もある為、長時間のサービス利用を嫌がる傾向もあります。

身体機能の維持・社会的フレイルの予防の為には、要支援の方の短時間型通所リハビリの利用は状況に則していることが多いのではないでしょうか?

送り迎えの対応について

通所系事業の送迎サービスは重要です。

事業的には送迎車両の維持、燃料費、人件費などのコストがかかり悩みの種です。

できるだけ安全に・効率的に運用することが重要になります。

送迎の対応を考えるポイント
  • 送迎人員 
    • 一人送迎ができるようにしましょう。
  • 車両選択
    • 車両によって、乗れる人数が違います。つまり、利用者の受け入れ数にも関与してきます。
    • 軽自動車:運転手1名 利用者3名
    • 普通車:運転手1名利用者4~5名(ミニバン型)
  • 送迎範囲の選定
    • どの程度の距離まで送迎対応するか考えましょう。
    • 一度利用を受けると、長期利用になることも多い
    • 解説初期の支援として、無理して受け入れると業務上の負担になる場合があります。

安定的な事業の為には、送迎範囲の設定は配慮を要します。

設定範囲外の受け入れをする場合は、開始時のマネジメントを丁寧に行う事も重要です。

目標設定と利用期間を本人・家族、ケアマネジャーと共有するようにしましょう。

送迎範囲外の利用者を送迎対応することは、長期的には負担になります。

どこまでの対応が継続的に可能か?を想定しておくことは大切です。

また、利用者1人にスタッフ1人で迎えに行くようなことも出るかもしれません。状況によっては人的コストが多くなるため、注意が必要です。

送迎をしない対応も可能

通所サービスでは送り迎えが基本です。

しかし、利用者の合意が得られた場合は利用者自身で来所することも可能です。

わたしの事業所でも、自分で車を運転して来所される方もいらっしゃいます。

診療所・クリニックで短時間通所リハビリを開設した場合は

利用者自身で来院・通ってくるシステムを採用した方が良いかもしれません。

収益を考える

事業継続の為、収益を考えることは必須です。

令和3年度の通所リハビリテーションの収支差率は0.5%と令和2年度と比べ、1.1%の低下です。

新型コロナウイルス感染症の影響もありますが

収益が上がりやすい事業ではありません。

では、付帯事業としてはどこに価値があるのか?

これは、母体事業ごとに様々な意図があるかと思います。

その1つとしては、老人保健施設や病院の入院の窓口の一つとして考えです

地域包括ケアシステムの中で

在宅と入所・入院をつなぐ機能としての通所サービスを期待する

では、1-2時間型はどうでしょうか?

自立度の高い方も多い為、入所への窓口機能は少ないのではないでしょうか?

1-2時間型の価値は事業母体によって考え方が変わります。

すでに長時間型の通所サービスがある場合には、新規顧客獲得の為。

回復期病棟退院後のフォローアップの一つとして

診療所では外来リハビリ機能の補填として

通所リハビリテーションは付帯事業として、どのような期待ができるか考えましょう

人件費を考える

人件費は主なコストです。

無用な人件費は抑えた方が良い為、事業開設の際にはスモールスタートが大切です。

通所リハビリの利用者単価を上げる為には

要介護では理学療法士等体制強化加算やサービス提供体制強化加算などの

スタッフ人員に対して追加できる加算があります。

しかし、主な収入の部分は基本利用料になる為

開設初期から利用者数を見込んだ人員は考えないほうが良いでしょう。

最低人員から初めて、状況に合わせて増員することが大切です。

プリセット2
プリセット2

利用希望が多くて人員を増加したが、時間経過で、利用終了者も増えて、人員過多になってしまった

ということもありますよ

開設地域の高齢者数や今後の推移、周辺の競合事業について調査が必要です。

円滑にサービス提供する為には、補助スタッフの存在が重要です。

業務のすべてを有資格者で実施すると人的コストが多くなる為

送迎業務や運動補助業務等ができるスタッフを

低コストで獲得できるかが人件費を抑えるポイントになります。

介護保険サービスの流入窓口を考える

介護保険サービスの調整者は介護支援専門員(ケアマネージャー)です。

ケアマネージャーは介護保険事業の多くを知っていますが

そのすべての加算・事業ごとのシステムをすべて理解している方は少ないでしょう。

利用者獲得の為には、自分たちの通所リハビリを知ってもらう事が重要です。

しかし、利用者側から積極的にサービスを調査することはほぼないです。

サービスを紹介するのはケアマネージャーになります。

新規開設するような場合には

パンフレットなどを作成してあいさつ回りをすることも有用です。

通所リハビリの存在を知ってもらいましょう。

ケアマネージャーが理解しやすい・紹介しやすい・活用しやすいパンフレットやWebページを作成することで、利用者側の理解も得られやすく、しっかり比較できるようになります。

パンフレットやWebページの情報として、事業所の実施時間・営業日・基本的な情報に加えて利用者やケアマネージャーの疑問に対応できる内容にします。

利用者側の疑問は?
  • 何をするのか?
  • ひと月の料金はいくらか?
  • 送り迎えはあるのか?
ケアマネージャーの疑問は?
  • リハビリ専門職の個別対応はあるのか?
  • 基本料金、取得加算はなにか?
  • 利用開始までの手順はどうしたら良いのか?

状況によって改変できたら良いですね。

デイケア管理職PT
デイケア管理職PT

Webページでは、PDFファイルなどをダウンロードして活用できるような仕様に、準備しておくこともおススメします。

ケアマネジャーが分かりやすい情報は、その先の利用者も分かりやすいものです。

また、その逆もある為、活用しやすい情報作成を心がけると良いと思います。

さいごに

通所リハビリ開設は、医療保険下中心に仕事をしてきた方々には言葉の意味の違いや書類・対応などで悩むことが多いと思います。

実際に運営を始めてからでも、提供サービスやケアマネとの連携、集客、保険請求等で次々と問題が出てきました。開設責任者にあたる方は大変ですよね。

超高齢化社会で、在宅生活を継続する為の支援として、通所リハは重要だと思います。しかし、安定的に収益が見込めるような報酬ではないと思います。

理由としては、医師やリハ専門職の配置が必要なのに、対応するには不足した報酬体系と考えています。

私自身、継続的に安定した事業運営に努めていきたいと思います。

ご拝読いただいた、通所リハビリ関係者の皆様も一緒に頑張っていきましょう。

気になる点などありましたら、お問い合わせよりご連絡ください。

ありがとうございます。

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